これまで私が働いた職場(2社)では、「詰める人」は多くありませんでした。
ただし、中にはそういう社員がいて、ハラスメント認定はされない程度ではあるものの、その人のチームから退職者が多く出ているようなこともありました。
私は明らかに問題だと思っていましたが、ある別の社員が「その人(詰める人)のレベルにみんなが着いていって上を目指すという考え方もある」というようなことを言っていたことがあり、そういう考え方もあるのか?と思い、今回の記事を書いてみました。
私の中の結論として、「詰める文化」でも機能する業界と機能しない業界があるのではないか、という考えに至りましたので、それについて書いてみます。
働いたことのない業界についても言及しており、あくまで私見ですので、ご了承ください。
「詰める文化」と業界
外資系コンサルティング会社や営業会社(不動産、など)では、いわゆる「詰める文化」があると聞くことがあります。
また昨今では、そのような文化が業績に結びついているというような話を聞くこともあります。
一方で、SIerやWeb系SaaS企業では、同じようなマネジメント手法についてあまり聞きません。
これは単なる「文化の違い」や「好き嫌い」の問題ではなく、事業モデル・価値提供プロセス・人材構造の違いによって、詰め文化が“機能する業界”と“機能しない業界”が構造的に分かれていると考えています。
以下では、その理由を私見として整理します。
成果の性質が違う:短期 vs 長期
外資コンサル・営業会社など
- 成果が短期で可視化される
- 個人の数字がそのまま業績に直結する
- 失敗しても翌月また売ればリカバリーできる
- 努力量が成果に反映されやすい
そのため、短期的に成果を引き出すための強圧的マネジメントが合理的に働きやすい構造があります。
SIer・SaaS系など
- プロジェクトは数ヶ月〜数年スパン
- 成果はチームの協働で生まれる
- 設計品質や技術負債が長期的に効く
- 努力量より思考の質が成果を決める
短期的に詰めると、品質低下・離職・属人化・技術負債が増え、むしろ逆効果になりやすいのです。
再現性の違い:努力で伸びる仕事 vs 思考で決まる仕事
営業やコンサルには「型」があります。
努力量を増やせば平均値が上がる構造が存在するのではないでしょうか。
一方、SIerやSaaSは複雑性が高く、努力量ではなく、設計判断の質が成果を左右します。
詰めることで判断精度が落ちれば、後からバグや障害として跳ね返ってきます。
人材構造の違い:属人性 vs チーム知識
営業は個人戦であり、スター社員が数字を引っ張る世界です。
SIer・SaaSはチームスポーツであり、属人化はリスクで、離職はプロジェクト崩壊につながります。
詰め文化は個人依存を強めるため、チームの知識資産を毀損しやすい構造があります。
KPI構造の違い:単一KPI vs 複合KPI
営業は「売上」というKPIで回ります。
SIer・SaaSは複合KPIでないと破綻します。
- 品質
- 納期
- 技術負債
- 顧客満足
- チーム継続性
- プロダクトの健全性
詰め文化は単一KPI(納期・工数)に偏りがちで、長期的に組織を壊すリスクがあります。
SIer・SaaSで成果が出るマネジメント文化とは
では、逆にどのような文化が成果につながるのでしょうか。
私見では、以下のような原則が重要だと考えています。
長期的な知識資産を最大化する
- 設計品質
- ドキュメント
- ナレッジ共有
- 技術負債の管理
- チームの継続性
思考の質を問う
- 「なぜその設計にしたのか」
- 「もっと良い方法はないか」
- 「再現性のあるプロセスか」
チームの知識総量を増やす
- ペアプロ・モブプロ
- コードレビューを教育の場にする
- 属人化をリスクとして扱う
技術的安全性を重視する
- レビュー文化
- 再発防止の仕組み化
- 個人責任ではなくプロセス責任
仕組み化で成果を出す
- CI/CD
- テスト自動化
- IaC
- 権限管理の標準化
改善の習慣化
- 毎週の振り返り
- 小さな改善の積み上げ
- 技術負債返済を開発に組み込む
SaaS企業の重視するビジョンへの共感
直近、2025年の転職活動で、SaaS系企業の求人をいくつか見ましたが、自社のビジョン・ミッションへの共感を重視している、応募条件に入れている企業が多かったです。
これは、チームとしての協働や、人材に長期に活躍してもらうことを期待している証かと思います。
まとめ
SIerやSaaSで詰め文化が機能しないのは、その業界の価値が“長期的な知識資産”に依存しているためと考えます。
私が所属したようなSIerやデータプロダクトを扱う会社では、そのような文化で退職者が多く出ることは、本当に大きな損失であると思います。
逆に言えば、長期資産を最大化する文化を作れば、SIer・SaaSは強くなると考えています。「事業モデルが何を求めているのか」を見極めることが重要だと感じています。
