2025年4月23日正午頃、国際物流大手の近鉄エクスプレス(Kintetsu World Express)の社内システムで大規模なサーバー障害が発生しました。この障害により、同社の業務システム全般が利用できない状態となり、貨物の追跡や出荷手続きなどが正常に行えない事態に陥っています。
近鉄エクスプレスは障害発生当日に公式ウェブサイト(kwe.com)上で状況を公表し、原因究明と復旧作業に全力で取り組んでいると発表しました。
以降、同社は定期的に進捗を更新しており、4月25日正午時点でも「システム障害が継続しているが、一部の国と地域ではオペレーションが稼働している」と報告しています。つまり、発生から2日以上経過した4月25日時点でも完全復旧には至っておらず、限定的ながら業務再開している地域もある状況です。
参考:kwe.com
障害の原因:サイバー攻撃の可能性も含めた見方
現時点で障害の直接的な原因は公式には明らかにされていません。
近鉄エクスプレスのITチームが原因の調査と復旧対応を最優先で進めており、同社CIO(最高情報責任者)まで含めた体制で対応にあたっているとのことです。
公式発表では「サーバー障害」とのみ表現されていますが、障害の規模や復旧に時間がかかっていることから、SNS上では、サイバー攻撃(例:ランサムウェア※)によるシステム侵入の可能性も指摘されています。特に大型連休(ゴールデンウィーク)直前のタイミングであり、休暇中・休暇直後の企業の隙を突いた攻撃ではないかという見方もあります。
ただし現時点では原因は確定しておらず、単なる機器トラブルやソフトウェア不具合の可能性も否定できません。公式の原因発表が出るまでは推測の域を出ないことに注意が必要です。
※ランサムウェア: 他社の事例では、社内ネットワークに侵入してデータを暗号化し身代金を要求する「ランサムウェア」攻撃により、複数日の業務停止に追い込まれたケースが報告されています。今回の近鉄エクスプレスの障害も同様の手口による可能性が取り沙汰されていますが、あくまで可能性の一つです。
障害による具体的な影響
今回のシステム障害は、物流業務のさまざまな面に影響を及ぼしています。
貨物の配送遅延
荷物の集配・仕分けシステムが停止したことで、一部貨物の発送・配送に遅延が生じています。
実際に取引先企業の中には「近鉄エクスプレスのシステム障害により特定商品の配送が遅れている」と顧客向けに案内している例もあります(meganesuper.net)。
国際輸送貨物のスケジュールにも乱れが出ている可能性が高いです。
問い合わせ・追跡サービスの停止
同社の貨物追跡(トラッキング)システムやオンラインでの問い合わせフォームなどが利用不能となりました。そのため、荷物の現在状況を確認したり新規の出荷依頼を行ったりすることが、通常の方法ではできない状態です。
近鉄エクスプレスは公式に「メールの送受信は平常通り可能」としており、システム障害下でもEメールによる連絡は維持されていると説明しています。
しかし、ウェブシステム経由の情報照会ができないため、顧客からの問い合わせが一時的に困難になっています。
取引先企業への波及
近鉄エクスプレスを物流パートナーとして利用するメーカーや販売会社も、この障害の影響を受けています。
自社商品の出荷や納品が遅延したり、在庫管理に狂いが生じたりするなど、サプライチェーン全体に波及効果が及んでいるようです。特に「問い合わせ不能」により状況把握に時間を要するケースもあり、ビジネスパートナー各社は顧客への説明や代替手段の検討に追われている状況です。
復旧の見込みと現在の対応状況
近鉄エクスプレスは障害発生直後から復旧班を編成し、システムの復旧作業に着手しています。
4月24日夕方の時点では「依然としてシステムが利用できない状態が続いている」と発表されましたが、メール通信が影響を受けていないことを強調し、急を要する案件は担当者経由で対応するよう呼びかけました。
4月25日正午の公式更新では、一部地域で業務が再開できている旨が伝えられており、徐々にではありますが限定的なシステム復旧が進んでいるようです。しかし、完全復旧のめどに関しては現時点で公表されておらず、同社は「復旧状況については適宜ウェブサイト等で案内する」としています。つまり、復旧見込みは不明ではあるものの、同社が昼夜を問わず対応中であり、事態は日々変化している状況です。
当面は、近鉄エクスプレス側も手作業や代替システムを用いて重要業務の継続を図っている模様です。例えば、日本国外の支社・代理店ネットワークを活用し、一部の国・地域では発送業務を再開しているとのことです。今後、原因の究明と併せて再発防止策を講じる必要があり、復旧後もしばらくは業務の調整や滞留貨物の解消に時間を要する可能性があります。
一般ユーザーが注意すべき点
今回の障害に関連して、一般利用者(荷物の発送・受取を予定している方や取引先企業の担当者など)が注意すべきポイントは以下の通りです。
最新情報の確認
近鉄エクスプレス公式サイトの「お知らせ」欄に障害に関する最新情報が随時掲載されています。状況が日々変わる可能性があるため、定期的に公式発表をチェックしましょう。また、大手ニュースメディアや物流業界ニュース(例:Logistics Todayなど)でも続報が報じられる場合があります。
荷物の遅延を見越した行動
現在近鉄エクスプレス経由で配送中の荷物がある場合、通常より配達に時間がかかることを念頭に置いてください。受取予定日には余裕を持ち、必要に応じて発送元や販売店にも状況確認すると安心です。特に企業間取引の荷物の場合、納期調整が必要になるかもしれません。
代替手段での問合せ
同社のオンラインシステムが停止している間、貨物追跡や問い合わせはメールや電話など別の手段で行う必要があります。近鉄エクスプレスでは「担当部署へ直接連絡してほしい」と案内しています。普段連絡を取っている営業担当者やカスタマーサービス窓口に電話・メールで問い合わせるようにしましょう。
不審な連絡に注意
システム障害が公表されている状況に便乗し、不審なメール(フィッシング詐欺)や偽の連絡が来る可能性も考えられます。例えば「近鉄エクスプレスの代理」を装ったメールで個人情報を求めてくるケースなどです。公式発表はあくまでウェブサイト上で行われるため、公式以外の情報源からの連絡には慎重に対応してください。
代替サービスの検討
急ぎの配送案件などでどうしても支障が出る場合、他の物流業者の利用も検討する必要があるかもしれません。ただし、近鉄エクスプレスも部分的に業務を再開していますので、まずは担当者と相談のうえ最適な対応策を判断してください。
おわりに
今回の障害は、国際物流ネットワークにおけるITシステムの重要性と、障害発生時の影響の大きさを改めて浮き彫りにしました。一般ユーザーとしては慌てずに公式情報を注視し、必要に応じて柔軟に対応することが肝要です。また、大規模なシステム障害はどの企業でも起こり得るため、日頃から重要な取引の際には連絡手段を複数確保しておくなどのリスク管理も求められます。