システム開発会社からマーケティング・リサーチの会社へ転職して間もない私は、マーケティングというものを理解することに戸惑いを感じていました。
マーケティングってなんか、ふわっとしているなあ。
品質、広告、販促、口コミ、競合商品、季節性、天気とか変数多すぎ。
シンプルに説明してほしいなあ。
転職時は、サービス開発やデータ集計といったスキルを求められていたため、マーケティングの知識がほとんどない状態でした。
転職後にマーケティングに関する様々な本を読みましたが、先述のもやもやを解消してくれる「マーケティングの法則」について書かれた本に出会いましたのでご紹介します。
森岡毅、今西聖貴著『確率思考の戦略論』
バイロン・シャープ著、前平謙二訳『ブランディングの科学』
この2冊は、衝撃、感動でした。
なお、本記事では、あまり細かく本の内容について記載をしないようにしています。
マーケティングの法則について書かれた2冊の共通点
ご紹介する2冊では、どのようなカテゴリーでも当てはまる法則について記載されています。カテゴリーとは、菓子、洗剤、自動車、銀行といったサービス・製品の分類単位です。
全く異なる菓子市場にも自動車市場にも同じ法則が適用できる点がおもしろいです。どのようなビジネスを行っている人にも参考になります。
また、実際のマーケティングデータの分析をもとに導かれた法則であり、理論のみではなく実践をもとに記述されています。
※当然ですが、ビジネス活動であるマーケティングには、100%成り立つ法則というものはありませんので例外は生じ得ます。万有引力とか運動方程式とか、自然科学のようにはいきません。
確率思考の戦略論
著者
『確率思考の戦略論』著者の森岡毅氏は、言わずと知れた伝説のマーケターです。P&G出身で、USJや丸亀製麺をV字回復させるなどの業績は非常に有名です。最近は、西武園ゆうえんちのリニューアルも手掛けていらっしゃいました。書籍出版やメディア露出も多いです。
内容少しだけ
この本の核心の部分だけ、引用します。
それら市場構造を決定づけているDNA、あるいは震源とも言うべき「本質」は一体何でしょうか? いきなり核心の答えを申し上げますが、それは消費者のPreference(プレファレンス)です。
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 22版 P.22
ビジネス戦略の本質は実はかなりシンプルな顔をしていると私は考えています。ようするに戦略の行きつく先もその3つしかないということです。戦略、つまり経営資源の配分先は、結局のところPreference(好意度)、Awareness(認知)、Distribution(配荷)の3つに集約されるのです。
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 22版 P.40
序盤でこれだけ言い切っていただき、一気に引き込まれました。
USJでの事例が紹介されながら、確率論を織り交ぜつつ、プレファレンスの測り方、需要予測といった内容が展開されていきます。
数学の知識があるとより楽しめるかもしれませんが、必須というわけではありません。
ブランディングの科学
著者
『ブランディングの科学』著者のバイロン・シャープ氏は「南オーストラリア大学の教授であり、同大学のアレンバーグ・バス研究所のマーケティングサイエンスディレクターでもある」そうです。
内容少しだけ
この本でしばしば登場するダブルジョパディの法則を紹介しておきます。
ダブルジョパディの法則:マーケットシェアが低いブランドは購買客数も非常に少ない。またこれらの購買客は行動的ロイヤルティも態度的ロイヤルティもやや低い。
ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11 P.11
つまり、シェアを増やしたければ、購買客数を増やすべきであるということです。
この本の面白い点の一つは、STPなどのコトラー派のマーケティング理論に反対の立場をとっている点です。マーケティングの教科書に載っているような手法や流行りの手法に対しても、エビデンスをもとに反論しています。
例えば、ダブルジョパディの法則から考えると、「ロイヤリティマーケティング」ではなく、いかに「ライトユーザー」に購入してもらうかが大事だ、というような主張です。
読んでいて「マーケティングの研修で時間をかけて学んだあれは何だったんだ・・」と思うこともありました。
その他いくつも学ぶ要素がありました。特に、第12章の「メンタル・アベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ」など、初学者の私は興味深く読み進めました。
『ブランディングの科学』はPART2、新市場開拓編も出版されています。
おわりに
この2冊は何度も読み返しています。
有名な本なので、マーケティング関連の仕事をされている方は、読んだことある方も多いかと思います。初学者の方など是非お手に取ってみてください。
マーケティングの「当たり前」を疑うきっかけにもなるのではないかと思います。