昨今、ロイヤルティマーケティング、ファン化といった戦略が流行しているかと思います。
CRMやデジタルマーケティングの発展によって、顧客へのアプローチがしやすくなったことが、その流れを後押ししています。
そのような流れに対して、顧客以外の消費者に顧客なってもらうことが重要という主張もあり、その一つが本記事でご紹介する、芹澤連氏著『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』です。
未顧客の重要性
市場はノンユーザーやライトユーザーであふれているのだから、ブランドを成長させたいのなら、その人たちに商品購入・サービス利用してもらうことが重要だ。
バイロン・シャープ著『ブランディング科学』に感動して以来、そのような考え方は私の脳内に強烈にインプットされ、業務に活かすチャンスを狙っていました。
なぜ、ノンユーザーやライトユーザーが重要かということが『ブランディングの科学』で述べられています。簡単に申し上げると、シェアの高いブランドは浸透率(購入率)が高い、すなわち多くの顧客に購入・利用されているということがデータで示されています。また、リピート顧客にさらに購入・利用してもらうのはなかなか難しいということもあります。
『ブランディングの科学』については、以前こちらの記事で簡単にご紹介させていただきました。
そんな考えが定着している中で見つけたのが、『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』です。
顧客獲得の方法
競合ブランドと差別化するためのターゲット設定や施策を行うという発想ではなく、ブランドが想起、検討、利用されるきっかけであるカテゴリーエントリーポイント(CEP)と自社ブランドの結びつきを増やそうという考え方が『ブランディングの科学』で述べられています。
CEPについてはこちらの記事に書きました。
『“未”顧客理解』においても、顧客獲得のためにブランドとCEPの結びつきを増やすことの重要性が述べられており、具体例を紹介しながら新しいCEPを見通す方法が紹されています。『ブランディングの科学』と『“未”顧客理解』をあわせて読むと、より理解が進み、実践に近づけると思います。
過度なターゲティングをやめることで業績を回復させた話は、USJでの森岡毅氏の戦略においても有名です。以前のUSJはターゲットを「映画好き」に設定していたが、ファミリー層などを獲得するため、コンセプトを「映画の世界を体感できるテーマパーク」から「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へ変更したというものです。
ターゲット効率を求めすぎるとリーチが取れなくなるという話は、広告の世界でも言われることです。
個々のCEPやマーケティング施策ごとにターゲットが設定されているのは構わないのだと思います。プロダクトのコンセプトといったレベルで過剰にターゲティングしてしまうのは、勿体ない状況になっている可能性があります。
未顧客理解のためのフレームワーク
『“未”顧客理解』の中では、未顧客理解のため、「オルタネイトモデルを作る」「随伴性を把握する」「ベネフィットを再解釈する」「ブランドを再構築する」という流れが紹介されています。
具体的な中身に言及することは控えますが、インタビューや観察を通して、未顧客の行動や欲求、制約、ブランドの利用によって得られる報酬とそれらの関係性を深く理解し、顧客になってもらうための施策につなげる考え方が述べられています。
カテゴリーの異なる商品・サービスに関する複数の事例を示しながら、フレームワークの使い方を紹介されており、実践のイメージがしやすいかと思います。
おわりに
あらためて、『ブランディングの科学』と『“未”顧客理解』はおすすめですが、両方合わせて読むのはさらにおすすめです。どちらも、何度も読み返す書籍になりそうです。