データ分析や統計調査を行う際には、「誤差」を考慮することが重要です。その中でも代表的な誤差として、「標本誤差」と「系統誤差」が挙げられます。
本記事では、これら2つの誤差の違いや発生原因、対策についてまとめます。
標本誤差とは
定義
標本誤差(sampling error)とは、母集団全体を調査せずに、その一部である「標本」を用いて調査を行う際に生じる誤差です。これは統計的に避けられないランダムな誤差であり、標本サイズや選び方によって変動します。
発生原因
- 母集団を完全には調査できず、一部のデータ(標本)のみを用いるため。
- 標本が母集団の特性を完全に反映していない場合。
特徴
- ランダムな要素が大きく、統計的に測定や調整が可能。
- 標本サイズを大きくすると、標本誤差は減少する。
具体例
例えば、ある市に住む全員の平均身長を調べたいとします。このとき、100人を無作為に抽出して平均身長を計算すると、その平均値が母集団全体の平均身長と一致しないことがあります。これが標本誤差です。
対策
- 標本サイズを増やす
標本サイズを大きくすることで、誤差が小さくなります(中央極限定理に基づく)。 - 無作為抽出を徹底する
偏りのない方法で標本を選ぶことで、誤差を減らせます。
系統誤差とは
定義
系統誤差(systematic error)とは、調査やデータ収集の方法に偏りがあるために生じる誤差です。これは測定手法やデータ収集の設計に起因するもので、標本誤差とは異なりランダムではありません。
発生原因
- 偏った抽出方法:特定の属性を持つ人々だけを調査対象に含める。
- 測定機器の不正確さ:測定器が正確でない場合。
- 調査設計の欠陥:質問項目や調査手法に偏りがある場合。
特徴
- ランダムではなく、特定の方向に偏った結果をもたらす。
- 標本サイズを増やしても解消されない。
具体例
- 高齢者の意見を調査する際、インターネットアンケートを用いた場合、インターネットを使えない高齢者が除外され、結果に偏りが生じます。
- 温度計が常に1℃高い値を示す場合、計測されたすべての値が正確な値よりも1℃高くなります。
対策
- 調査設計の改善
偏りのない設計を行う。 - 測定機器の校正
正確な測定ができるように機器を調整する。 - パイロット調査を実施
本調査の前に試験的な調査を行い、問題を洗い出す。
標本誤差と系統誤差の違い
項目 | 標本誤差 | 系統誤差 |
---|---|---|
発生要因 | 母集団の一部(標本)を調査するため | 調査方法や測定機器の偏りによる |
誤差の性質 | ランダムな誤差 | 偏った方向に一定の誤差を持つ |
標本サイズの影響 | 標本サイズを増やすと減少 | 標本サイズを増やしても減少しない |
対策 | 標本サイズを増やし、無作為抽出を徹底 | 調査設計や測定方法を改善する |
誤差を最小限に抑えるためのポイント
- 無作為抽出を徹底する
偏りを防ぐため、可能な限り無作為に標本を選びましょう。 - 標本サイズを適切に設定する
標本誤差を減らすには、調査対象の規模に応じた標本サイズを確保します。 - 事前調査(パイロット調査)を行う
調査設計の問題点を事前に見つけ、修正することが重要です。 - 調査目的に応じた方法を選択する
系統誤差を防ぐために、調査手法や測定機器を目的に合わせて選択しましょう。 - データ収集後に偏りを確認する
集めたデータに偏りがないか確認し、必要に応じて補正を行います。
まとめ
標本誤差と系統誤差は統計調査において避けられない課題ですが、それぞれの特性を理解し適切に対策を講じることで、調査結果の信頼性を高めることができます。標本誤差は統計的手法である程度コントロール可能ですが、系統誤差は調査の設計段階での注意が重要です。正確なデータを得るためには、これらの誤差を意識して調査を計画・実施することが大切です。