ある時「クエン酸に疲労回復効果があるか」という話題になりました。
確かに「クエン酸は疲労回復に効く」というイメージはあります。
クエン酸の効果を謳う製品の情報を調べてみました。
ビタミンレモン クエン酸
例えば、以下のリンクにある、ハウスウェルネスフーズさんの「ビタミンレモン クエン酸」の商品情報ページには「機能性表示食品」としての届出情報が記載されています。
●届出表示:本品にはクエン酸が含まれます。クエン酸は、継続摂取により日常生活や運動後の疲労感を軽減することが報告されています。●本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。 ●本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
「疲労回復」ではありませんが、「疲労感を軽減」との記載があります。
パッケージにも「疲労感を軽減」と謳われているため、届出表示の情報と合っています。
機能性表示食品
そもそも機能性表示食品とは何でしょうか。
消費者庁の機能性表示食品のページに以下の記載があります。
機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。
特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。
消費者庁が科学的根拠の審査をするわけではなく、事業者の責任という点がポイントです。
クエン酸の「疲労感を軽減」の科学的根拠
届出情報の科学的根拠
では、クエン酸の「疲労感を軽減」の科学的根拠はどのように示されているか、前出の「ビタミンレモン クエン酸」の届出情報を見ていきます。
「様式Ⅰ:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)」の「当該製品の機能性に関する届出者の評価」に以下の記載があります。
一部引用し、重要と思う点をハイライトしています。
(ウ)背景
クエン酸は生体内では代謝 (クエン酸回路) の中間体としてエネルギー産生において中心的な役割を果たしている。一般に、「疲労回復によい」「筋肉や神経の疲労回復によい」などと言われているが、これらの効果を検証した研究レビューは見当たらない。そこで、本研究レビューでは、クエン酸の疲労感軽減に対する効果を検証した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
J-DreamⅢ〈JST Plus(1981~)+JMED Plus(1981~)〉(検索日2018年6月8日)及びPubMed(検索日2018年6月8日) を用いて検索を実施し、該当する論文3 報を評価対象とした。この3報はいずれも、健常成人を対象として日常生活や運動後の疲労感を主観指標であるVASにて評価を行っていた。
(オ)主な結果
採用文献3報は、いずれもクエン酸摂取による疲労感軽減効果を主観指標であるVASで評価しており、3報中2報で効果ありとの結果であった。残る1報も疲労感軽減の傾向が認められ、全体として肯定的な結果であった。また、採用文献3報とも、8~28日間の継続的なクエン酸摂取による日常生活や運動後の疲労感の軽減を評価していることから、クエン酸の継続的な摂取が望ましいと考えられる。
一般に言われている「疲労回復によい」「筋肉や神経の疲労回復によい」という効果を検証した研究は見当たらなかったため、クエン酸の疲労感軽減に対する効果を3つの論文から評価したと書かれています。
また、その3つの論文は主観指標であるVASで評価しており、3報中2報で効果ありとの結果であったとされています。
VAS(Visual Analogue Scale)とは
VAS(視覚アナログ尺度:Visual Analogue Scale)は、被験者が自分の疲労感や痛みなどの主観的な感覚を0から100の範囲で評価する方法です。
VASでは、通常、被験者に「全く疲れていない(0)」から「完全に疲れている(100)」といったスケールが提示され、その中で現在の状態に最も近い点を選んでもらいます。
届出情報の科学的根拠となる論文では、VASの評価で疲労感軽減効果が示されているとのことでしたので、被験者が主観的な感覚で効果があったとされているようです。
科学的根拠の論文の内容
「様式Ⅴ:機能性の科学的根拠」の中のファイルに根拠となる論文の情報がありました。
ぱっと見て「3つの論文に同じ著者が存在すること」「2つが日本語の雑誌と思われること」「2018年の届出で2007年掲載の論文を根拠としていること」が気になりました。
もしかしたら、クエン酸の疲労軽減効果に関する論文があまりないのかもしれませんが、できれば、色々な著者が効果を報告していたり、海外の権威ある論文に掲載していたり、新しい情報であると、より強い根拠となるかと思いました。
No.3の論文を入手できましたので、PDFファイルをChatGPT(GPT-4o)に読ませてみました。
特に「疲労回復」とまで言えない理由が気になったため、そのあたりを聞いてみました。
届出情報のとおり、VASでの主観的な疲労軽減効果は示されたと回答しています。
運動後のVAS以外の生理的指標(血中乳酸値、トルク、心拍数)には有意な変化がなかったため、「疲労回復効果」と言うには、追加の研究が必要と結論付けています。
「トルク」については、サイクルエルゴメーターを使った実験でトルクが計測されており、身体的なパフォーマンスを評価するための一つの指標とされているようです。
おわりに
今回得た情報の範囲、かつChatGPTも使用した確認の結果にはなりますが、クエン酸の「疲労感の軽減」については、主観的指標により、一定の根拠が示されていました。
一方で「疲労回復」を示す物理的な数値による根拠などはなさそうです。これがあれば、メーカーもこちらを根拠にするのかなと思います。