※この話は、私の友人の実体験をベースにしていますが、そのまま書くわけにもいかないため、言葉の置き換えや一部創作をしています。ただ「正論・否定・批判」が人や組織をどう追い詰めるか、という点はかえておりません。
若手リーダーとの日々
あるプロジェクトで、若手の「営業チームのリーダー」と一緒に働くことになりました。
彼はとにかく否定から入る人でした。
- 「そのやり方では結果は出ません」
- 「それだと効率が悪すぎます」
- 「どうしてもっと考えられないんですか?」
最初の数回なら「厳しいけどチームを思っての発言なのかもしれない」と思えました。
けれども、繰り返されるにつれて、その“正論”の連打に心が削られていきました。
新人への態度と私の指摘
ある日、彼が新人メンバーに対して延々と細かい指摘をしていました。
「違う」「間違っている」「それでは通用しない」と言葉を畳みかける。
見かねて私はこう言いました。
「もう少し別の言い方はできませんか? “こうすると良くなる”って伝える方が前向きに受け止めてもらえると思うよ。」
返ってきたのは冷たい一言でした。
「私はそういう伝え方はしません。甘えを助長するからです。」
その瞬間、心の中で「これは指導ではなく攻撃だ」と確信しました。
会社の評価とのギャップ
さらに苦しかったのは、会社からの評価が高かったことです。
- 「彼の営業は会社に貢献している」
- 「彼は厳しいけれどリーダーシップがある」
- 「新人も成長させてもらっている」
そう評価されているのを耳にすると、自分がおかしいのかと疑いたくなります。
私は会議で「もっとお互いに安心して意見を出せる雰囲気が必要だと思う」と発言しました。
しかし、返ってきたのは会社幹部のこんな言葉でした。
「支え合いが逆に重荷になる場合もある。その点も理解してあげてほしい。」
要するに「様子を見よう」というスタンス。
会社としては成果を出している人材に、あえて介入するつもりはないのだと悟りました。
正論・否定・批判の連打
彼の口から出る言葉は、いつも似たようなものです。
- 「全員がもっと前に出て考えて行動すべきだ」
- 「誰が何を担うのか明確でないから混乱する」
- 「基準が揺れているから成果が出ない」
- 「取り組まないままの課題が膨らんでいる」
確かに、一理はあります。
しかし、言葉はすべて「正論」「否定」「批判」で構成されており、人を動かすどころか萎縮させるばかり。
まるで、会議が「ダメ出し大会」と化していくのです。
会議室の沈黙
ある定例会議でのこと。
リーダーはホワイトボードの前に立ち、チームの課題を次々と書き出していきました。
- 「進行が遅い」
- 「数字の精度が低い」
- 「情報共有が足りない」
書き出された言葉は、全部が“問題”ばかり。
解決策は一つも示されず、ただ責められている空気だけが残りました。
会議室の空気は重く、誰も口を開けなくなりました。
メールのやりとり
ある日、彼から届いたメールにはこう書かれていました。
「今のままでは誰も責任を果たしていません。私が指摘し続けないと何も進まない。」
息苦しさしか感じません。
「責任を果たしていない」と断じられることで、努力や協力がすべて否定されるように感じたのです。
心が折れていく過程
最初は「どうにか改善しなければ」と必死でした。
でも、正論と批判にさらされ続けるうちに、だんだん気力が奪われていきました。
プロジェクトへの熱意は薄れ、「どうでもいい」と思う時間が増えていきます。
自分は強い方だと信じてきましたが、今回ばかりは本気で逃げ出したいと感じました。
伝えたいこと
もしあなたの職場に、正論を振りかざし、否定を繰り返し、批判ばかりを浴びせる人がいたら要注意です。
一見「改善のために言っている」ようで、実際にはチームの力を奪い、組織を破壊します。
正しさは必要です。
けれど、人を尊重せずに正しさだけを武器にすれば、やがて誰も動かなくなります。
私は「正論・否定・批判地獄」がここまで人を追い詰めるのかと、身をもって痛感しました。
あなたの職場にも、似たような人はいませんか?
もし思い当たるなら、一人で抱え込まず、相談する・距離を取る・外の視点を取り入れるなどの行動をおすすめします。
他人の考えは変えられません。
逃げてもよいと思います。
チェックリスト ― あなたの職場は大丈夫ですか?
以下に当てはまることが多いとしたら、注意が必要かもしれません。
「正論・否定・批判」が組織を壊し始めているサインです。
会議の場面で
- 会議が「ダメ出し大会」になっていないか?
- 議題が「誰のせいか」ばかりに偏っていないか?
- 問題点ばかり並び、解決策や前向きな提案がほとんど出ていない
日常のやりとりで
- 発言の第一声がいつも「違う」「それはダメ」から始まっていないか?
- 相手の努力や成果を認める言葉がほとんど聞かれない
- 伝え方が常に断定的で、対話ではなく裁断になっている
チームの雰囲気で
- 発言を控える人が増えていないか?
- 新人や立場の弱い人が委縮している
- 笑いや雑談がなく、空気が重くなっている
自分の心の変化で
- 会議の前に「また否定されるのでは」と構えてしまう
- プロジェクトへの関心や熱意が薄れ、「どうでもいい」と感じることが増えている
- 本来なら強い自分が「もう逃げたい」とまで思っている