スポンサーリンク

Microsoft Foundry「Hosted Agents」がGA|AIエージェント基盤は「作れる」から「本番で動かせる」へ【2026年8月】

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

Hosted Agentsとは何か

2026年8月、Microsoftは「Microsoft Foundry」のエージェント実行基盤「Foundry Agent Serviceのホスト型エージェント(Hosted Agents)」を正式提供(GA)しました。2026年4月22日にパブリックプレビューとして公開されてから、約3か月半でのGA到達です

Hosted Agentsは、エージェントの1セッションごとに専用のサンドボックス環境を割り当てる仕組みです。単なるプロセス分離やコード実行専用サンドボックスではなく、Azureのテナント間VM分離と同じレベルの「ハイパーバイザー分離」を、セッション単位で提供する点が特徴とされています。ファイルシステムを持つ状態がスケールtoゼロ後も保持され、エージェントは中断した作業ディレクトリからそのまま再開できます。

従来のコンピュートとの違い

コンテナやサーバーレス関数のような従来型コンピュートは、複数ユーザーが同一インスタンスを共有する前提で設計されています。しかしエージェントはファイルを書き込み、コードを実行し、機密性の高いコンテキストを保持しながら動作するため、セッションを共有することは「非効率」ではなく「安全性のリスク」になるとMicrosoftは説明しています。Hosted Agentsでは、セッションごとに次の要素が個別に割り当てられます。

  • 専用の分離サンドボックス(従来型は複数セッションでコンテナを共有)
  • 低分散で予測可能なコールドスタート
  • スケールtoゼロ後もファイル・ディスク状態を保持する再開機能
  • エージェントごとのEntra Agent ID(従来は共有サービスアカウント)
  • 組み込みの可観測性(エージェント/セッション/フリート単位)
スポンサーリンク

2026年8月のGAで何が変わったのか

SLAとエンタープライズサポート

GA版では、Azureの標準的なエンタープライズ水準の保証が付与されました。稼働率99.9%のSLA、エンタープライズサポートプラン、Azure PolicyやMicrosoft Purviewとの統合が含まれ、料金体系は従量課金(consumption)です。ネットワーク面では、モデル呼び出しとツール呼び出し(MCPサーバー、AI Search、Fabricなど)の双方を対象にした、パブリック経路への通信を持たない完全なVNet分離が可能になりました。評価(Evals)機能もGAとなり、組み込みの評価器・カスタム評価器に加え、本番トラフィックに対する継続的なモニタリングをAzure Monitorに連携できます。

Agent Framework Harnessも同時にGA

同じタイミングで、オーケストレーション基盤「Microsoft Agent Framework」の実行ランタイムである「Harness」もGAに到達しました。Agent Framework自体は2026年4月2日に1.0 GAとなっていましたが、Build 2026(6月2〜3日)でHarness・GitHub Copilot SDK/Claude Agent SDKコネクタ・マルチエージェント編成パターンが安定版になり、今回のGAで「エージェントを作るライブラリ」から「エージェントを動かし、統治するランタイム」へと役割が拡張された形です。

Harnessには、関数呼び出し、履歴の永続化、コンテキスト圧縮、Plan/Executeモード対応のToDoリスト、ファイルメモリ、Web検索、ツール承認、OpenTelemetryによる計測などが標準搭載されており、個別に無効化も可能です。一方でシェル操作やファイルアクセス、バックグラウンドのサブエージェント、自動ループ機能は既定でオプトインとなっており、有効化時には警告が表示される設計です。

これまでの経緯(プレビューからGAまで)

2026年4月:パブリックプレビュー開始

Hosted Agentsは2025年秋のMicrosoft Igniteで最初にプレビューされていましたが、2026年4月22日に「根本的に作り直した」形で再度パブリックプレビューが発表されました。この時点で、LangGraph・Microsoft Agent Framework・Claude Agent SDK・OpenAI Agents SDK・GitHub Copilot SDKなど、特定のハーネスやフレームワークに縛られない「マルチモデル・マルチハーネス」設計が打ち出されています。Dockerfileで実行環境を自由に定義でき、azd deploy一つでデプロイできる開発体験も特徴です。

Build 2026:観測性・ツール・メモリの強化

6月のBuild 2026では、Hosted Agentsと連携する周辺機能もあわせて強化されました。ツールをフレームワーク横断で管理する「Toolbox」、セッションをまたいでコンテキストを保持する「Memory」、そしてTrace/Evaluate/Monitor/Optimizeの4本柱からなる観測性機能がパブリックプレビューとして登場し、これらが今回のGAに合わせて本番運用に耐える形へ整備されています。企業のナレッジやMicrosoft 365データにエージェントを接続する「Foundry IQ」「Work IQ」「Fabric IQ」も同時期に整備が進みました。

開発者への実務インパクト

コードの大部分は「ハーネス」

InfoQが8月3日に報じた記事では、興味深いデータも紹介されています。MBZUAI VILA-Labが2026年4月に公開した論文では、2026年3月末に一時的にソースマップ付きで公開されたClaude Code v2.1.88(約51万2000行、1,884ファイル)を分析したところ、全体の約98.4%が権限管理・コンテキスト管理・サンドボックス・ツールルーティング・リカバリーといった「ハーネス」部分で、AIの意思決定ロジック自体は約1.6%にとどまったと推計しています。著者らはこの数値がリーク由来のバンドルに基づく行数ベースの分類であり、生成・圧縮済みコードも含む点には留保が必要だと明言していますが、Codex CLIやAiderなど独立して開発された他のエージェントも同様のハーネス構造に収斂している点は、設計上の選択というより問題の本質的な制約を示唆していると指摘されています。

セキュリティ・ガバナンス面の強化

もう一つの実務的なポイントは「暴走防止」です。Microsoft AIのプリンシパルアーキテクトによる検証では、Agent Frameworkは40往復でループを自動停止したのに対し、比較対象(ホスト側の停止制御をオフにした場合)は300往復まで自律的には止まらなかったと報告されています。GitHub Copilot SDKやClaude Agent SDKをAgent Frameworkから呼び出す「コーディングエージェントコネクタ」も用意されており、これらは個別のIDや監査ログを持つのではなく、フリート全体に設定済みのID・コンテンツセーフティ・可観測性ポリシーにそのまま従う仕組みになっています。トレースは同じOpenTelemetry基盤・Foundryダッシュボードに集約されるため、「どのエージェントが」「どのポリシーの下で」動いたかを一元的に追跡できます。

まとめ

  • Foundry Agent ServiceのHosted Agentsが2026年8月にGA。2026年4月のプレビューから約3か月半で本番運用フェーズへ移行
  • セッション単位のハイパーバイザー分離、99.9% SLA、完全なVNet分離、Evalsの継続モニタリングなど、エンタープライズ向けの保証が整備された
  • 同時にAgent Framework Harnessもスタンダードなランタイムとして本番運用対象に。LangGraphやClaude Agent SDKなど任意のフレームワーク・モデルを組み合わせられる「マルチモデル・マルチハーネス」設計が引き続き軸になっている
  • エージェントのコードの大半は「意思決定ロジック」ではなく「ハーネス(実行基盤)」が占めるとの分析もあり、暴走防止・ID管理・監査ログといった運用面の設計が今後さらに重要になっていきそうです

Azure上でエージェントの本番運用を検討している開発者にとって、今回のGAは「プレビューで様子見」から「実際に本番導入を検討するタイミング」への切り替わりを示す節目と言えそうです。

参考サイト

タイトルとURLをコピーしました