データベースは、アプリケーションや業務システムの根幹を支える重要な存在です。
正しい設計がなされていないと、後からの拡張性や保守性に大きな影響を及ぼします。
本記事では、データベース設計の手順を、実務でよく使われる考え方とともにまとめます。
Contents
要件定義:データベース設計の出発点
業務の理解
まずは、システムでどのような業務をサポートするのかを明確にします。
関係者(エンドユーザー、営業、管理者など)へのヒアリングなどをとおして、業務フローを把握します。
取り扱うデータの洗い出し
- どんな情報を登録・管理するか?
- それぞれのデータ項目の意味は?
- 項目間の関係性は?
これらを明確にすることで、後の設計がスムーズになります。
概念設計:ER図(エンティティ・リレーションシップ図)の作成
概念設計では、業務で扱う情報を「エンティティ(実体)」として整理し、関係(リレーションシップ)を可視化します。
エンティティの例
- 顧客(Customer)
- 商品(Product)
- 注文(Order)
関係の例
- 顧客は複数の注文を行う → 「顧客:注文=1:多」
主な成果物
- ER図(エンティティ同士の関係を線で結んだ図)
- 属性(エンティティが持つ項目)の一覧(例:顧客 → 名前、メールアドレス、住所)
論理設計:正規化によるデータ構造の整理
論理設計では、エンティティをテーブル形式に落とし込み、データの重複や不整合を避けるために「正規化」を行います。
正規化とは
冗長なデータや繰り返し項目を分割して、効率的な構造にすること。
以下の3段階が基本です。
正規形 | 説明 |
---|---|
第1正規形 | 繰り返し項目を排除 |
第2正規形 | 主キーに部分的に依存する属性を分離 |
第3正規形 | 主キー以外に依存する属性を分離 |
主キーの決定
各テーブルに一意のレコードを識別する主キー(Primary Key)を設定します。
物理設計:実装を見据えたテーブル定義
論理設計が完了したら、実際のデータベースに落とし込むための物理設計に進みます。
物理設計の内容
- 各カラムのデータ型(例:VARCHAR、INT、DATEなど)
- カラムの制約(NOT NULL、UNIQUEなど)
- 外部キー制約(外部のテーブルとの関係性)
- インデックスの設計(検索性能の最適化)
ツールを使ったDDLの作成
SQLの「CREATE TABLE」文を記述し、データベースにテーブルを作成します。
実装・テスト:データベースの構築と検証
設計したデータベースを元に、実際にデータベースを構築し、ダミーデータでの動作確認を行います。
確認項目
- 正しくデータが格納されるか?
- 関係(リレーション)が想定どおり機能しているか?
- クエリのパフォーマンスは問題ないか?
保守・運用設計:将来を見据えた設計も重要
初期の構築が完了しても、将来の拡張性や運用を見据えた設計・管理ルールも重要です。
考慮すべきポイント
- バックアップ設計
- スキーマ変更時の影響
- セキュリティ(ユーザー権限、アクセス制御)
まとめ:設計の質がシステムの未来を決める
データベース設計は、「情報をどう管理し、どう活用するか」の土台を作る作業です。
以下のステップを丁寧に踏むことで、保守しやすく、高速に動作し、将来的な拡張にも耐えられる設計が実現できます。
- 要件定義
- 概念設計(ER図作成)
- 論理設計(正規化)
- 物理設計(テーブル定義・制約)
- 実装・テスト
- 保守・運用設計