2025年5月1日、ヤマト運輸が宅急便の送料を2025年10月より値上げすると発表し、各メディアで報道されました。
今回の値上げは主に大型サイズの荷物が対象で、一般の利用者にも影響が及ぶ可能性があります。
値上げの対象サービスや新料金の具体例、実施時期、背景理由、そして消費者への影響や過去の値上げとの比較について、まとめます。
値上げの対象サービス
今回の送料値上げでは、ヤマト運輸の宅配サービスのうち特定のサイズや種類の荷物が対象となっています。
具体的には次のとおりです。
- 宅急便(通常の宅配便)
荷物のサイズ区分が「120サイズ」から「200サイズ」にあたる中型~大型の荷物が対象です。三辺合計が120cmを超える荷物(120、140、160、180、200サイズ)が値上げになります。 - ゴルフ宅急便(キャディバッグサイズ)
ゴルフバッグを送る専用宅急便も値上げ対象です。 - スキー宅急便(スキー板サイズ)
スキー板などスキー用品を送る専用宅急便も値上げ対象です。 - 宅急便コンパクト(小型専用箱の宅配便)
値上げ対象外です。
今回の改定でも送料据え置きとなり、変更はありません。 - 宅急便(小~中サイズ)
60サイズ・80サイズ・100サイズの通常宅急便も値上げ対象外で、現行の運賃に変更はありません。 - クール宅急便(冷蔵・冷凍の宅配便)
今回の発表では特に触れられていません。クール宅急便は通常の宅急便運賃に加えて所定のクール宅急便付加料金が必要ですが、10月の改定でこの付加料金が変更されるとの情報はありません(※ちなみに前回2024年4月の改定でクール宅急便の付加料金が引き上げられています)。
なお、沖縄県発着の荷物は今回の値上げ対象から除外されています。
これは沖縄向けの特別料金体系によるものとみられ、沖縄便に関しては現行運賃が維持されます。
値上げ後の具体的な料金例(地域別・サイズ別の新料金)
実際にどれくらい値上げされるのか、料金の具体例を確認してみます。
ヤマト運輸の発表によれば、同一地域内(例:関東→関東)の宅急便運賃は以下のように改定されます(金額は税込・現金払いの場合)。
- 120サイズ:現行1,850円 → 新料金2,040円(+190円)
- 140サイズ:現行2,190円 → 新料金2,630円(+440円)
- 160サイズ:現行2,510円 → 新料金3,020円(+510円)
- 180サイズ:現行3,060円 → 新料金3,680円(+620円)
- 200サイズ:現行3,720円 → 新料金4,470円(+750円)
また、以下の例のように、専用宅急便の料金も引き上げられます。
- ゴルフ宅急便(キャディバッグ)
現行2,510円 → 新料金3,020円(+510円) - スキー宅急便(スキー板)
現行3,060円 → 新料金3,680円(+620円)
※上記は同一地域内の配達の場合の例です。宅急便の送料は発送地と宛先の距離(地域区分)によって異なります。遠方への配送ほど料金は高く設定されています。例えば、関東から遠方の地域(北海道や九州など)へ送る場合は、同じサイズでも上記より高い運賃となります。
今回の値上げ率は平均約3.5%程度とされていますが、サイズや送り先地域によって具体的な値上げ幅は異なります(遠距離ほど絶対額が大きくなる傾向です)。
値上げの実施時期
この送料改定は2025年10月1日(水)発送分から適用される予定です。
それまでは現行料金で利用できますが、10月以降の発送分は自動的に新料金になりますので、大型荷物を送る予定がある場合は実施時期に注意しましょう。
また、法人契約の顧客に対しては個別に出荷量や業務負荷を踏まえて協議の上で調整するとしています。
値上げの背景・理由
値上げの背景には、主に人手不足に伴う人件費の上昇や燃料費などのコスト増といった、物流業界を取り巻く環境変化があります。
人件費・労働環境の改善
ネット通販の拡大などで配送需要が増える中、ドライバーや仕分けスタッフの人手不足が深刻です。人手確保のため賃金や時給を引き上げざるを得ず、人件費負担が増大しています。
ヤマト運輸は「従業員や配送パートナーの労働環境改善につなげるため」として料金改定を行うと述べており、従業員の待遇改善や労働環境の是正に充てる狙いもあります。
燃料費・資材費などのコスト高
原油価格の変動や物価上昇により、ガソリン・軽油など燃料費や梱包資材などの原材料費も上がっています。トラックを走らせるコストそのものが上昇傾向にあり、企業努力だけでは吸収しきれない状況です。
再配達の負担
宅配便の約11%前後は受取人不在などにより再配達となっているとのデータがあります。再配達はドライバーの追加労働や燃料消費につながり、大きな負担です。こうした非効率をカバーするコストも企業側が背負っており、全体的なサービス維持の負担が増しています。
持続可能な物流体制の構築
上記のような背景から、ヤマト運輸は「より良いサービス提供と持続可能な物流の実現」に向けて毎年のように運賃改定を行う方針を打ち出しています。サービス品質を維持しつつ将来にわたり宅配網を維持するため、適正な運賃水準への見直しが必要と判断したと言えるでしょう。
このように、人件費や燃料費の高騰といった外部環境の変化に対応し、従業員の働きやすい環境づくりとサービスの持続性確保のために今回の値上げに踏み切ったと考えられます。
一般消費者への影響
今回の値上げによって、私たち一般消費者にもいくつかの影響が予想されます。
ネット通販の送料が上がる可能性
通販サイトやオンラインショップで商品を購入する際の送料に影響が及ぶ場合があります。特にヤマト運輸の宅急便で大型商品の配送を行っている通販業者では、送料の値上げ分が料金に転嫁されたり、送料無料の条件が厳しくなったりする可能性があります。
例えば、大型家電や家具などを通販で購入するときの配送料金が高くなるかもしれません。ただし、小型~中型の商品(60~100サイズ)については今回の値上げ対象外のため、そうした商品の送料は据え置かれるケースが多いと考えられます。
個人で荷物を送る場合の負担増
引っ越し時に荷物を宅急便で送る場合や、大きな荷物を実家・知人に送るような場合、これまでより送料が高くなる可能性があります。特に120サイズ以上の箱や大型スーツケース、ゴルフバッグ・スキー板などを送るときは、数百円単位で負担増となります。
例えば、ゴルフクラブをラウンド先に宅急便で送るケースでは、今回の改定後は関東圏内でも約500円の値上げ(2510円→3020円)となり、往復だと1000円程度多く支払う計算です。
クール便利用への影響
生鮮食品やクール便で荷物を送る消費者にとっては、今回ベースの運賃部分に大きな変化はありません。ただしクール宅急便の付加料金は前回2024年改定で値上がりしているため、既にクール便利用時のコストは上昇傾向にあります。
今後も生鮮品の配送コストが上がれば、産直サービスなどの料金に影響が及ぶ可能性があります。
宅配便サービスの選択肢
ヤマト運輸の値上げにより、他の宅配業者(佐川急便や日本郵便など)の料金やサービスにも関心が集まるでしょう。他社も人件費やコスト増の状況は同様で、すでに値上げを実施・検討しているケースがあります。消費者としては、送る荷物のサイズや内容によっては他社サービスや郵便小包等も比較検討することで、コストを抑えられる場合もあります。
もっとも、ヤマト運輸は2024年度の値上げでは大型サイズに限定して個人利用者への影響を抑える方針を示していました。今回(2025年度)は120サイズ以上も対象となったため前回より範囲は広がりますが、小さい荷物の送料は据え置かれている点で、日常的に宅配便を利用する大多数の消費者への影響は限定的とも言えます。一方で、ネット通販で大型商品を買う場合や大型荷物を送る機会がある場合には、今後送料負担が増すことを念頭に置く必要があります。
過去の値上げとの比較
ヤマト運輸による宅急便の送料値上げは今回が突然の単発ではなく、近年継続的に行われているものです。
過去の主な値上げ事例と今回との比較をまとめます。
2017年頃以前
それまで宅急便の基本運賃は長年据え置かれてきましたが、ネット通販の急増による荷物取扱量の増大やドライバーの長時間労働問題が顕在化し、2017年にヤマト運輸は大規模な値上げを実施しました(当時は約27年ぶりの大幅値上げで話題になりました)。
2023年4月
ヤマト運輸は約10%の大幅値上げを実施。このときは宅急便(全サイズ)・宅急便コンパクト・宅配サービス「EAZY」・国際宅急便など幅広いサービスで一斉に運賃改定が行われています。
例えば関東から関東への80サイズ宅急便は1,150円から1,230円に上がりました。人件費や燃料費の高騰によるインフレ圧力などが理由と明示され、事実上業界全体での値上げの先陣を切った形です。
2024年4月
前年に続き、ヤマトは約2%程度の値上げを実施しました。ただしこのときは対象を大型荷物に絞り、宅急便の中でも最大サイズの180サイズ・200サイズのみ値上げ、小~中サイズや宅急便コンパクトは据え置きとしました。
加えて、クール宅急便のクール料金(温度管理にかかる追加料金)が60~120サイズで55~110円ほど引き上げられています。ヤマトは「個人利用者への影響を抑えるため大型のみ値上げした」としており、2023年に比べて限定的な改定でした。
2025年10月(今回)
約3.5%の値上げとなります。対象は120サイズ以上の荷物と専用宅急便(ゴルフ・スキー)で、中型クラスも含めて広めの範囲となりました。小型の荷物は引き続き据え置きですが、昨年より対象範囲が拡大した分、個人にも影響しうる改定です。ヤマト運輸は2023年から毎年度運賃改定を行う方針を掲げており、今回もその流れに沿った値上げと言えます。
今回の値上げ幅(約3.5%)自体は、前回2023年の約10%アップに比べれば小幅ですが、中型サイズにも適用されるため影響範囲は広がっています。一方、2017年以降段階的に値上げを重ねてきたことで、宅急便の送料はこの数年で累計すると大きく上昇しています。例えば関東間80サイズの運賃を例にすると、2017年以前は1,000円程度でしたが、2023年改定で1,230円となり、据え置き期間を経て現時点(2025年)でも1,230円(80サイズは今回は対象外)と数年前に比べ2割程度高くなっています。
今後も物流業界では人件費やコスト増が続くと予想され、他社も含めた運賃の見直しが継続する可能性があります。実際、佐川急便や日本郵便(ゆうパック)も近年は値上げの動きがあり、業界全体で送料水準が上がりつつあります。消費者としては、サービスの質の維持と持続可能な物流網のために必要な措置である一方、生活コストの一部として注視していく必要があるでしょう。
まとめ
ヤマト運輸の宅急便送料は2025年10月より一部で値上げされ、中型~大型の荷物を送る際の負担が増えます。人手不足や燃料費高騰など背景事情がありますが、ネット通販利用者や個人にも影響が及ぶ可能性があります。今後荷物を送る際は、新しい運賃について留意する必要があります。