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医療現場の生成AI活用事例まとめ|カルテ下書き・議事録・退院サマリ【2026年8月】

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はじめに

医師の働き方改革や慢性的な人手不足を背景に、医療機関における生成AIの導入が2026年に入って一気に加速しています。これまでは事務部門や間接業務での活用が中心でしたが、最近では診察室での会話からカルテ下書きを自動生成したり、退院サマリや看護申し送りといった診療領域の記録業務にまで生成AIが入り込む事例が増えてきました。

この記事では、2025年後半から2026年にかけて発表された医療機関・医療ITベンダーの生成AI活用事例を、企業名・数値を含めてまとめます。医療業界に限らず、記録業務や議事録作成の負担軽減を検討している方にとっても参考になるはずです。金融業界の事例は金融業界の生成AI活用事例まとめで取り上げていますので、あわせてご覧ください。

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記録業務を効率化するAIスクライブ・音声要約サービス

医療現場で最も導入が進んでいるのが、診察や会話を録音し、AIが自動でカルテ下書きや要約を作成する「AIスクライブ」型のサービスです。

Ubie「ユビー生成AI」|大学病院10施設以上を含む全国100病院へ導入

医師とエンジニアが創業したヘルステック企業のUbie株式会社は2026年2月5日、医療機関向け生成AIソリューション「ユビー生成AI」の導入数が、2026年1月時点で大学病院10施設以上を含む全国100病院を突破したと発表しました。2024年の提供開始から1年半での実績です。月間利用数は10万セッションを突破し、現場の創意工夫により8,000件以上のユースケース(システムプロンプトのテンプレート)が生まれているといいます。

具体的な導入成果も公表されています。恵寿総合病院では退院時看護サマリの作成時間を42.5%削減し、看護師の心理的負担も27.2%軽減しました。南部徳洲会病院では、インフォームドコンセント(IC)記録作成など月間約4,000件の業務に音声要約機能を活用し、月あたり約200時間の業務時間を創出しています。亀田総合病院では実証実験の結果、電子カルテ連携によりがん登録業務の情報収集時間を年間約3割削減できることを確認しました。さらに、収益改善を支援する「ユビーDPCサポーター」では、九州大学病院がDPCコーディングの精度向上と効率化により、年間6,500万円以上の収益改善見込みを確認しています。シリーズ累計では、病院・クリニックあわせて全国47都道府県・1,800以上の医療機関に導入されており、2026年度の診療報酬改定で重視される「業務効率化」と「収益改善」の両立を、AIで後押しする動きが本格化しています。

JCHO北海道病院×NTTドコモビジネス|スマホ×AI音声認識でカルテ下書きを国内初の一気通貫実現

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)北海道病院、株式会社プレシジョン、株式会社シーエスアイ、NTTドコモビジネス株式会社の4者は2026年1月19日、厚生労働省「ICT機器を活用した勤務環境改善の先駆的取組をおこなうモデル医療機関調査支援事業」に採択されたことを発表し、AIカルテ下書きの実証を開始しました。

診察室の会話をスマートフォンで録音し、プレシジョンのAI音声認識システム「今日のAI音声認識」でテキスト化、院内に設置したオンプレミス生成AIサーバでSOAP形式のカルテ下書きを作成、シーエスアイの電子カルテ「MI・RA・Is V」へSMART on FHIR形式で連携する、という一連の流れを院内で完結させる点が特徴です。オンプレミス生成AIによるSOAP草案作成から電子カルテ取り込みまでを一気通貫で実現する医療機関は国内初としています。参考データとして、別の医療機関でクラウド版「今日のAI音声認識」を再診患者50名に使用したところ、患者の入室から次の患者の入室までの所要時間が、音声認識未使用の13分9秒から10分43秒へと20%以上短縮されたことも公表されています。音声データを含む診療情報を院内のみのセキュアな環境で処理することで、外部クラウドへの送信を避けている点も、医療機関ならではの配慮といえるでしょう。

OPTiM AI ホスピタル|ボイスレコーダーAI要約と主治医意見書作成

東証プライム上場の株式会社オプティムは2025年10月21日、病院向け生成AI搭載サービス「OPTiM AI ホスピタル」に新機能「ボイスレコーダーAI要約」と「主治医意見書作成」を追加したと発表しました。カンファレンスや院内ミーティングの音声を録音・アップロードしてAI要約する機能で、要約プロンプトは病院スタッフ自身がテンプレート化できます。インフォームドコンセントの内容を要約する「IC AI要約」(β版)や、電子カルテのデータをもとに主治医意見書の下書きを自動生成する機能も提供しており、外部インターネット接続を必要としないセキュアLLM「OPTiM AI」を基盤としている点が特徴です。導入前のROI検証ができる無料PoCキャンペーンも実施されました。

大規模病院で進む生成AI活用プロジェクト

診療領域だけでなく、病院組織全体で生成AIの利活用体制を構築する動きも出てきています。

大阪病院×富士通Japan×日本マイクロソフト|退院サマリ・看護申し送りへ適用拡大

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院、富士通Japan株式会社、フォーティエンスコンサルティング株式会社の3者は、日本マイクロソフトの技術を活用し、2026年2月13日に協定を締結してプロジェクトを開始しました。大阪病院ではすでに2024年11月から、会議の議事録作成やRAG(検索拡張生成)を活用した職員向けチャットボットの構築など、診療領域を除いた業務への生成AI適用に取り組んでおり、一定の成果が得られたことから、今回は診療領域への適用拡大に踏み出しました。

具体的には、大阪病院の年間退院サマリ約1万6,000件に対し、富士通Japanの生成AIを活用した医療文章作成支援サービスで作成支援を行うほか、看護申し送り業務の要点整理にも生成AIを活用し、2026年6月の運用開始を目指しています。あわせて、医師・看護師・事務部門など多職種が参画する「DXアンバサダー(院内推進リーダー)」を設置し、現場課題の把握からユースケース検証、利活用支援までを一体的に推進する体制づくりも進めています。3者は本プロジェクトを、全国の公的病院や一般病院におけるAI導入のモデルケースと位置づけており、得られた知見を他の医療機関へ共有していく方針です。

議事録・患者説明記録を効率化するサービス

メドコムAI議事録|月額0円から使える患者説明・院内会議の自動要約

医療機関専用スマートフォン「メドコム」を展開する株式会社メドコムは、患者説明や院内カンファレンスを録音・自動文字起こしし、生成AIが要約する「メドコムAI議事録」を2026年6月1日より販売開始しました。月額0円から利用でき、要約データはQRコード経由で電子カルテへ直接出力できます。

セキュリティ面では、医療機関ごとにデータ領域を論理的に分離する「テナント分離方式」を採用し、全データを国内で処理・保管する、入力情報を機械学習に利用しない、閉域ネットワーク接続によりインターネットを経由しない、という3つの要件を満たしている点をアピールしています。先行実証した病院からは「スマートフォンで録音できるため場所を選ばず使用できる」「要約の精度は実用レベルに達している」といった評価が寄せられているとのことです。厚生労働省の令和8年度「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」の後押しを受けたサービス展開である点も、行政の政策動向と歩調を合わせた事例として注目されます。

事例から見える3つのトレンド

記録業務の効率化から経営改善へ

Ubieの事例のように、当初は退院サマリや音声要約といった「記録業務の効率化」を目的に導入されたサービスが、DPCコーディングの精度向上による収益改善など、病院経営そのものを支える機能へと拡張されつつあります。単発の業務効率化にとどまらず、AIを病院経営のインフラとして位置づける動きが強まっているといえるでしょう。

国内完結・オンプレミスを重視したセキュリティ設計

JCHO北海道病院の事例やメドコムAI議事録に共通するのは、音声データや患者情報を院内あるいは国内のセキュアな環境で処理し、外部への送信や機械学習への利用を避ける設計です。医療情報は機微性が高く、汎用の生成AIサービスにそのまま入力することへの懸念が根強いため、オンプレミスやテナント分離といったアーキテクチャ面の工夫が、導入の前提条件になっている印象です。ChatGPT・Claude・Copilotなど各社の生成AIサービスをどう使い分けるかについては、ChatGPT・Claude・Copilot使い分けガイドでも整理していますので参考にしてください。

厚労省の政策的後押しと診療報酬改定

JCHO北海道病院の実証は厚生労働省「ICT機器を活用した勤務環境改善の先駆的取組をおこなうモデル医療機関調査支援事業」の採択を受けたものであり、メドコムAI議事録も令和8年度「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」を意識したサービス展開です。Ubieの事例でも、2026年度診療報酬改定における「医療DX・データ活用」評価の強化が導入の追い風になっていると説明されています。行政の補助金・制度設計が、医療機関の生成AI導入を後押しする構図が明確になってきました。

非医療従事者にも参考になるポイント

医療現場の事例は専門性が高く見えますが、考え方自体はどの業界にも応用できます。会議や打ち合わせの音声を録音してAIに要約させ、定型フォーマットへ自動で流し込む、という基本構造は、議事録作成や資料作成に悩む一般企業にもそのまま当てはまります。特に、テンプレート化されたプロンプトを現場スタッフ自身がカスタマイズできるようにする、という運用は、非エンジニアが多い職場でAI活用を定着させるうえで重要な工夫といえるでしょう。

一方で、機密情報を扱う以上、どこまでのデータを社外のAIサービスに渡すのか、学習に利用されない仕組みになっているかを事前に確認する姿勢は、業界を問わず必須です。医療機関の事例に見られるオンプレミス化やテナント分離の発想は、個人情報や取引先情報を扱う企業がAI導入を検討する際のヒントにもなります。

まとめ

2026年の医療業界では、Ubieの「ユビー生成AI」やJCHO北海道病院の実証のように、カルテ下書きや看護サマリといった記録業務の効率化を起点に、生成AIの活用が本格的に広がっています。富士通Japan・日本マイクロソフトが支援する大阪病院のプロジェクトのように、診療領域全体を巻き込んだ組織的な取り組みも始まりました。共通しているのは、セキュリティを最優先しながら、記録業務の効率化から病院経営の改善へと段階的に活用範囲を広げていく姿勢です。厚生労働省の政策的な後押しも重なり、今後さらに多くの医療機関で同様の動きが加速すると見られます。

参考サイト

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