会議やインタビューの音声を自動でテキスト化したいとき、ChatGPT・Gemini・Microsoft Copilot・Claudeのどれを使えばよいか迷う方は少なくありません。結論から言うと、4つのサービスは文字起こしへの対応方法が大きく異なります。ChatGPTはMac版アプリの「Record Mode」で録音から要約まで一気通貫、GeminiはAPI経由で音声ファイルを直接読み込んで文字起こしが可能、Copilotは主にTeamsの会議機能として提供、そしてClaudeは2026年9月時点でAPI・アプリともに音声ファイルの読み込みに対応しておらず、音声入力(ディクテーション)はあくまで「話した内容をテキスト化してプロンプトとして送る」ための機能にとどまります。
以下では、それぞれの仕組みと制約を整理し、目的別にどれを選ぶべきかを解説します。
ChatGPTの文字起こし機能:Record Modeとは
ChatGPTには大きく3つの文字起こし手段があります。
1つ目は、2025年6月に登場した「Record Mode(録音モード)」です。OpenAIのヘルプセンターによると、Record Modeは会議やボイスメモを最大120分まで録音し、リアルタイムで文字起こしと自動要約を行う機能です。ただし利用にはいくつか条件があります。
- 対応プランはPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduで、無料プランでは使えません
- 提供されているのはmacOS版のChatGPTアプリのみで、Windows・スマホアプリ・Web版では利用できません
- Enterprise・Edu向けにはデフォルトで無効化されており、管理者が有効化する必要があります
- 現時点では英語での認識精度が最も高く、日本語を含む他言語は精度にばらつきがあるとされています
2つ目は、録音済みの音声ファイル(MP3など)をチャット画面にアップロードして文字起こしを依頼する方法です。こちらは無料プランでは音声ファイルの直接アップロードに対応していないとされ、実質的にPlus以上が前提になります。
3つ目は開発者向けの「Whisper API」です。Whisperは音声認識の精度とコストのバランスに定評があり、自社ツールに文字起こし機能を組み込みたい場合の定番として使われています。
Geminiの文字起こし機能:対応形式と上限
Googleの生成AI「Gemini」は、GeminiアプリとAPI(Gemini API/Google AI Studio)の両方で音声を扱えるのが特徴です。
Google AI for Developersの公式ドキュメントによると、Gemini APIが対応する音声形式はWAV・MP3・AIFF・AAC・OGG・FLAC・MPEG・M4A・Opus・WebMなど幅広く、1回のプロンプトで扱える音声の長さは最大9.5時間とされています。長時間の会議やインタビュー音声でも、ファイルをアップロードしてから文字起こしを指示する形で処理できます。
一方、コンシューマー向けのGeminiアプリでは、無料プランと有料プラン(Google AI Pro/Ultra)でアップロードできるファイルサイズや同時処理数に差があります。目安として、音声・動画以外のファイルは100MBまで、動画は最大2GB程度までとされ、1回に複数ファイルをまとめてアップロードすることも可能です。正確な最新の上限は変更される可能性があるため、利用前に公式のヘルプページで確認することをおすすめします。
API経由であれば処理内容をプロンプトで柔軟に指定できる(話者ごとに分ける、タイムスタンプを付ける、要約も同時に生成するなど)点は、ChatGPTのRecord Modeにはない強みです。
Microsoft Copilot:Teamsの会議文字起こし
Microsoft 365環境で働く人にとって身近なのが、Teamsの会議文字起こし機能です。これは正確には「Copilot」単体の機能ではなく、Teamsのライセンス体系に組み込まれた機能である点に注意が必要です。
- Teamsの文字起こし(トランスクリプト)自体は、Microsoft 365 Business Basic以上のライセンスがあれば追加費用なしで利用できる標準機能です
- 文字起こしの内容をAIが自動要約する「Intelligent Recap」を使うには、Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotのライセンスが別途必要です
- 2026年7月時点の月額目安は、Teams Premiumが1,499円、Microsoft 365 Copilot Businessが2,698円です(いずれも税抜・法人向け価格は変動するため公式サイトで要確認)
つまり「録音してそのまま文字にする」だけなら追加費用なしで使えますが、「要点を自動でまとめてもらう」にはCopilotまたはTeams Premiumの契約が前提になります。すでにMicrosoft 365を業務利用している組織にとっては、追加ツールを導入せずに議事録作成を自動化できる点が最大の強みです。
Claudeは文字起こしに対応している?
ここが最も誤解されやすいポイントです。Claudeには「音声入力(ディクテーション)」という機能がありますが、これは録音済みの音声ファイルやシステム音声を文字起こしする機能ではありません。
Anthropicのヘルプセンターによると、Claude Mobile(iOS/Android)の音声入力はFree・Pro・Max・Team・Enterpriseの全プランで利用でき、キーボードの代わりに音声でプロンプトを入力できる機能です。英語以外の言語対応はベータ版という位置づけです。あくまで「しゃべった内容をその場でテキスト化してAIへの指示文にする」ための機能であり、会議の録音データをアップロードして丸ごと文字起こしする用途には使えません。
さらに重要な点として、Claude APIは2026年9月時点でテキスト・画像・PDFなどのドキュメントには対応していますが、音声ファイルの入力形式には対応していません。開発者がClaudeを使って音声文字起こしツールを作ろうとしても、Claude単体では実現できず、Whisper APIやGemini APIなど他社の音声認識モデルと組み合わせる必要があります。
なお、開発者向けにはClaude Codeに音声で指示を出せる「/voice」コマンドがあります。これはコーディング作業をハンズフリーで進めるための機能で、一般的な会議の文字起こしとは用途が異なります。
4サービス比較表
| サービス | 音声ファイルの直接文字起こし | 主な提供形態 | 無料プランでの利用 | 強み |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT | ○(Record Mode/ファイルアップロード) | macOSアプリ中心、Whisper API | 実質不可(Plus以上が前提) | 録音から要約まで一気通貫 |
| Gemini | ○(API・アプリ) | Gemini API/Google AI Studio、Geminiアプリ | 一部可(サイズ・時間に制限) | 長時間音声への対応、API連携の柔軟性 |
| Microsoft Copilot | ○(Teams経由) | Teams文字起こし+Copilot要約 | 文字起こしはBusiness Basic以上で可 | Microsoft 365との一体運用 |
| Claude | ×(非対応) | 音声入力はプロンプト入力のみ | ディクテーションのみ利用可 | 長文の整形・要約力は高いが音声非対応 |
目的別のおすすめ
- Macで会議をまるごと録音し、要約まで自動でやってほしい人:ChatGPT Plus以上のRecord Modeが最有力です。ただしWindows環境では使えない点に注意してください。
- すでに録音済みの音声ファイルがあり、話者分けや独自フォーマットで文字起こししたい人・開発者:Gemini APIまたはWhisper APIによるカスタム実装が向いています。
- Microsoft 365を業務で使っており、追加コストを抑えたい人:Teamsの標準文字起こし機能でまず十分か確認し、要約まで自動化したい場合のみCopilotやTeams Premiumを検討しましょう。
- Claudeで議事録を仕上げたい人:音声そのものはChatGPTやGeminiで文字起こしし、その文字起こしテキストをClaudeに読み込ませて要約・整形させる、という2段階の使い方が現実的です。Claudeは長文の構成・要約力に定評があるため、この組み合わせは実務でもよく使われています。
疑問点
Q. 無料で使える文字起こしは?
A. 完全無料で使えるのは、Microsoft 365 Business Basic以上を契約している場合のTeams標準の文字起こしです。ChatGPTのRecord ModeはPlus以上、Geminiは無料枠内であれば短時間の音声ファイルを試せますが、いずれも上限や条件があります。
Q. 日本語の認識精度は?
A. ChatGPTのRecord Modeは現時点で英語の精度が最も高いとされ、日本語は改善途上です。GeminiとWhisperベースの文字起こしは日本語対応の実績が比較的豊富ですが、専門用語や固有名詞は誤認識が起こり得るため、重要な会議では文字起こし後の見直しをおすすめします。
Q. Claudeで音声ファイルを直接読み込ませることはできるか?
A. 2026年9月時点でClaude APIは音声形式に対応しておらず、Claudeアプリでも音声ファイルのアップロードによる文字起こし機能はありません。音声入力は「その場で話した内容をテキストのプロンプトに変換する」ディクテーション機能にとどまります。
まとめ
文字起こし・議事録作成という同じ目的でも、ChatGPT・Gemini・Copilot・Claudeでは対応方法も料金体系もまったく異なります。すでに使っている環境(Mac中心かWindows中心か、Microsoft 365を契約しているか)や、自動要約までAIに任せたいか文字起こし後の整形だけ任せたいかによって最適な選択は変わります。まずは自分の業務でどこまでを自動化したいのかを整理したうえで、今回の比較表を参考にサービスを選んでみてください。
